Graci グラーチ
パッソピッシャーロはシャンボール・ミュジニーなのか?
『心から愛するワインはバローロだ。ジャコモ・コンテルノやバルトロ・マスカレッロ、ジュゼッペ・マスカレッロのバローロは規律の中に偉大な厳格さを感じさせる。時間とともに変化していく妖艶さ。しかし、純粋さを。決して飲み疲れすることなく、野蛮さもない。』元々はミラノで金融関係の仕事に就いていたというアルベルト・グラーチ。知性に溢れ、自信に満ち溢れている。やるべきことがしっかりと解っているし、自らが愛するワイン、偉大なワイン、目標とすべきワインがクリアーに意識の中にあるのだろう。グラーチの畑はエトナ火山の北側斜面、今イタリアで最も注目を集めている産地と言えるかも知れないパッソピッシャーロ地区に位置する。2004年に購入した現在所有する畑は標高600mの畑アルクリアと、標高1,000mを越える畑バルバベッキの2つ。『何でこの畑を購入したかって?以前の所有者がケチだったからだよ。ケチ過ぎて農薬なんて撒いたことないんだって。お買い得でしょう。』ネレッロ・マスカレーゼを中心にカリカンテとカタラットを少量づつ栽培している。エトナの北側斜面は南側より極端に昼夜の寒暖差が大きく、標高600m以上の彼の畑は葡萄にとって非常に厳しい環境になっている。しかし、ここには農薬を全くと言って必要としない環境がある。驚くべきことに1,000mを越すバルバベッキの畑はその標高の高さ、冷涼な気候から害虫が少なく病気もほとんど無いのだそう。更には乾いた空気が絶えず動いている為、カビの繁殖も少ない為にボルドー液でさえほとんど使うことが無い。なんと、樹齢100年を超えるプレ・フィロキセラのネレッロ・マスカレーゼが今でも活躍しているとう貴重な畑。ワイン造りにおける哲学は一点のみ、『エトナという土地が持つ個性や伝統を如何に表現するか』なのだという。栽培においては除草剤などを用いず、あくまでも伝統的な手法を尊重。醸造はオークの開放発酵桶で発酵(ベースのエトナ・ロッソのみステンレスタンクで発酵)、伝統的な大樽を使用して熟成。勿論、全てのワインは自然酵母による発酵。亜硫酸も最小限に抑えている。長いマセラシオン、長期間の大樽での熟成、無濾過でのボトリング。まるでクラシックなバローロのよう。葡萄果実そのものを表現するかのようなワイン造りだ。出来上がったワインは今までのエトナのイメージとは全く違う。バローロやバルバレスコ、またはブルゴーニュワインで稀に感じることがある。口中では整然とした印象を与え、飲み込んだ後の膨らみのある長い余韻で、強さではなく、圧倒的なフィネスで満足感を与えてくれる。あのシャンシス・ロビンソンもグラーチのワインを賞賛している。『グラーチは若い造り手だが注目に値する。彼のワインはバローロ、バルバレスコ、もしくはブルゴーニュのようだ。』/シャンシス・ロビンソン。エチケットにはエトナチルネコが描かれている。(1,000年以上昔からヨーロッパで一番高い活火山であるエトナに生息する犬)『私は自然界の均衡をそこなうような除草剤や、その他いかなる科学的な薬剤を使用しない。セラーの中でも、極力人間の関与を排し、フィルターもかけずにボトリングする。エトナと共存するのだから。』エトナの自然を切り取り、その地の伝統に則ってワインを造り続けることで本当のエトナの実力を引き出しているかのかもしれない。








